瀬戸だより762号「瀬戸の青磁」という話
- 2021.02.06 Saturday
- 11:12
先週お伝えした通り、お雛めぐりはスタートしています。いつもの年なら、お祭りを華やかに演出する飾りつけもいっぱいですが、今年は控えめな感じです。まあ、それは仕方ない。何しろ緊急事態宣言発出中であります。それでも市内あちこちにひなの飾りつけは見られ、春らしさを感じます(まだ寒いけど)。
■第20回陶のまち瀬戸のお雛めぐり
http://www.seto-marutto.info/event-post/ohinameguri/
その雛めぐりのひなミッドも置かれてる瀬戸蔵で開催中の企画展「瀬戸の青磁−その始まりと展開−」を見てきました。瀬戸蔵ミュージアム内のこの企画展示スペース、狭いです。狭く展示点数も限られる代わりに小まめなこうした企画展が行われるのが個人的には気に入っています。大きな展示は展示点数も必要だったり、なかなか企画を進めるのもたいへんだろうと想像できますが、この規模なら「ちょっと気になる展示」には向いています。
瀬戸の青磁。瀬戸は陶器と磁器の両方を生産できる稀有な産地というのはこの瀬戸だよりでも繰り返して話してきました。磁器は染付に代表されますが、もちろん青磁も磁器であり、九州からその技法が磁祖・民吉により瀬戸に伝えられたのち(早い段階で)生産がスタートしています。
青磁というと、中国の銘品として伝来している文化財クラスのものもたくさんありますし、今も韓国の焼き物の代表格でお土産に買ってきたという経験がある方もいるでしょう。そういうものを見ていると感じるのは、一言で「青磁」と言っても千差万別、色合いも表現方法も様々です。鉄を含む釉である…これが青磁ですが、水色だったり薄い緑だったり様々な発色です。釉に厚みを持たせることでその色合いの深みを出したり(そういう生産過程も展示解説されている)、素地自体の性質で色合いも違ったりします。もちろん還元焼成の雰囲気も影響します。私が瀬戸窯業高校専攻科で学んでいたころの恩師は青磁を研究されていて「青磁には手を出すなよ、やり始めると奥が深くてたいへんだ」と話されていました。様々な要素の組み合わせであの魅力的な翡翠のような色が完成していると思うとより感慨深く感じます。実に奥深い釉です。
瀬戸の青磁ですが、今回の展示でも器や花器などだけでなく建材やトイレ(!)などまでも紹介されています。用途が幅広いのも瀬戸の特徴です。雛めぐりの見学といっしょにこの展示も楽しむのもおすすめです。(4月18日まで、瀬戸蔵ミュージアム)