〜せとものの話をしませんか〜「瀬戸だより」保存版

瀬戸の陶磁器店・加藤兆之助商店が発行しているメールマガジン「瀬戸だより」の保存版です。瀬戸のこと、焼き物のことなど、毎週土曜日お届けしています。
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瀬戸だより727号「辻晉堂の陶彫」という話
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     愛知県は緊急事態宣言が解除されました。関東や北海道は近々解除の話もありますが、解除されてもされなくても、依然十分に気をつけて行動することには変わりありません。

     

     解除された瀬戸の街ですが、市内の公共施設は今月いっぱいは休業が多いようです。瀬戸市美術館も瀬戸蔵も6月から再開になっているようです。しかし、市内にあっても県立の愛知陶磁美術館はもうすでに再開されています。ということで、久しぶりに美術館に出かけてきました。

     開催中の企画展は「異才 辻晉堂の陶彫 ―陶芸であらざるの造形から―」。当初は5月31日までの会期でしたが、コロナ休館の関係で6月21日まで延長されています。

     

    ■「異才 辻晉堂の陶彫 ―陶芸であらざるの造形から―」

    https://www.pref.aichi.jp/touji/exhibition/2020/t_tsuji/index.html

     

     辻晉堂は日本を代表する彫刻家。陶芸以外の分野の作家の「土」を素材にした作品というのは興味深いものがあります。陶磁器とかかわり合いの強い環境にいると、器の観念に知らず識らずに囚われ、素材「土」の特徴の一部しか見られていないことが多いように思います。今回の展示でもタイトルに「陶芸であらざる」とされています。

     

     「陶彫」という作品になります。陶の彫刻。作家は戦前より彫刻家として活躍していましたが、戦後に京都市立美術専門学校(現・京都市立芸術大学)の教授に就任後、京都に移り住んだことから始まります。そこには京焼があり土と出会える環境だったということです。

     

     ポスターにもある「犬」という作品。抽象化された陶彫ですが、展示ケースの中の作品を見ていると、その焼き締められた信楽の土が犬として動き出すように思いました。タイトルとそれに添えられた解説プレートを見ていくと様々な作品がより生き生きと自己主張してくるような展示でした。

     その解説の中で気になった言葉が「空洞性」というものでした。土(陶器)の特徴として空洞性があげられていました。なるほど土は彫刻の素材としてよく使われる木や石や金属と違ってある程度の厚みを持って、そして内側に空間を内包する素材です。無垢な土は乾燥焼成の段階で割れることが多くなります。どうしても中に空間が必要です。今回の展示でも最初は裏側から土を掘り出し空洞に、そして内なる空洞を表現として意識した作品になっています。ヘラで彫るような表現から始まり、最終的には薪窯が(京都の条例で)禁止ななり、電気窯と移行していくなかで、土の柔らかさを感じる作風のものも見られるように感じました。

     

     とにかく刺激的な展示でした。

     緊急事態宣言解除後の再開でしたが、入場の際にはソーシャルディスタンスなどの注意の他、氏名と連絡先を提出するなど、まだまだコロナ克服までの道のりを感じさせられました。でも、こうして美術館で鑑賞が可能になったということは、日常を取り戻すその一歩という印象を持ちました。

     

    | 展示感想 | 10:42 | comments(0) | - |
    瀬戸だより709号「テーブルウェアフェスティバル」という話
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       今週は歌会始がありました。宮中の新年行事の最後がこの歌会始。正月もここまでといつも思います。「望」の歌はどれもよかったです。そして、来週の御題も「実」と発表されました。またこれについてはあらためて考察しますね。

       来週末はもう2月になります。2月になるとまた今年も瀬戸市内では「雛めぐり」のイベントで1ヶ月にわたり雛で彩られます。でも、これもまたあらためて紹介しますね。

       

       ということで、今回は東京の話題。毎年この時期に東京ドームで開催されている「テーブルウェア・フェスティバル」についてです。

       

      ■テーブルウェア・フェスティバル2020

      https://www.tokyo-dome.co.jp/tableware/

       

       28回目となるこのイベントは日本最大級の「器の祭典」。日本各地の窯元はもちろん、世界各国の陶磁器、ガラス、漆器などが並びます。展示、販売、ステージイベントなど器好きの方にはたまらないイベントになっています。

       今回特にここで力を入れてお勧めしたいのは『「温故知新」彩りの器〜瀬戸焼〜』の特集企画の展示がされることです。

       なかなか瀬戸焼と言っても具体的な特徴が思い浮かばないという方もいるかもしれません。瀬戸の業界関係者でもその特徴をきかれて「特徴がないのが瀬戸の特徴」とか開き直りのように答える人すらいます。もちろん、そんなことはないのですがね。

       

       ここでおさらい。「瀬戸だより」で何度も繰り返し伝えていますが、瀬戸焼の特徴です。

       土は真っ白、きめ細やか。他産地の鉄分が混ざって色が着く「くせの強い土」とは違い、万能に使用できる「くせのない土」です。それをもって「特徴がない」と言ってしまいがちなんですが、その白い土を彩るため、また白いキャンバスの様な素地であったため、様々な色合いの釉薬が生みだされ、表現方法が発展しました。

       また、このきめ細かな白い土はアレンジすることにより磁器生産にも対応でき、陶器と並行して染付をはじめとする磁器を生産できる稀有な産地でもあります。その可塑性の磁器土はノベルティなどの複雑な形状の生産にも対応できました。

       瀬戸の焼き物は器だけでなく碍子やガス機器の燃焼ノズルなど器以外の分野でも活用されています。現在でも市内には配電盤やガス機器の関連工場が多くあります。

       様々な色、様々な形、様々な生産、これが瀬戸焼の特徴(と私は思っています)。

       

       今回の『「温故知新」彩りの器 〜瀬戸焼〜』の特集展示ではそのあたりの瀬戸の器の持つ、彩りや形状の豊かさを感じていただけると思います。

       窯元、問屋など瀬戸の瀬戸焼の関わる皆さんが協力しての展示。見応えある魅力ある展示になっていると思いますので、関東の皆さん、ぜひ東京ドームに行って、瀬戸焼の魅力に触れて、ぜひぜひ会場で瀬戸焼をお求めいただければ……と思っています。

       

       なお、当店は参加しておりません。出店される皆さん、がんばってください!

       

      | 展示感想 | 15:08 | comments(0) | - |
      瀬戸だより705号「3人の巨匠」という話
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         サンタクロースが出発のカウントダウンを始めようかという頃になりました。

         当店もどうやら年末の忙しいシーズンも終わりになってきたようで、ちょっとほっとしています。10月からずっと気になっていた展示をやっと見に行くことが出来ました。

         

        ■小森忍・河井郤]此濱田庄司 −陶磁器研究とそれぞれの開花−(瀬戸市美術館)

        http://www.seto-cul.jp/information/index.php?s=1569032106

         

         明日12月22日までの展示期間になるのですが(またギリギリです…)、なかなか内容の濃い展示でした。なにしろこの3人の巨匠の展示ですから面白くないわけはありません。

         大陸で、瀬戸で、最後は北海道で窯を開き中国陶磁の研究に邁進した小森忍。民藝運動に参加し独特の作風に到達した河井寛次郎と益子で民藝を追求した浜田庄司。「陶磁器界の三天才」と呼ばれた3人。戦前戦後を通じて文字通り日本の陶芸の発展の中心にいた3人。

         共通する点は3名が同時期に京都市陶磁器試験場において釉薬の研究を突き詰めていたことになります。そこは明治の開国以降、海外に向けた陶磁器生産の需要が伸びる中、近代的な窯業技術(あらゆる点において)の近代化を進めるために造られた試験場でした。その時代にあらゆる釉の知識・技術を身に着け、その後それぞれの作風の発展させていく様子がわかりやすく時代に沿って展示されています。晩年の中国古陶磁、民藝とそれは続いていきますが、その釉薬の技術は自在に作風を展開していく上で大きな要素だったのは言うまでもありません。

         

         陶芸の技術というと一般にはろくろの技術だったり、窯の焼成だったりが目立ちますが、個人的には「釉」というものが重要な知識・技術という気がします。もちろん現代では完成された釉薬として気軽に購入することもできます。調合の割合も情報として手に入れて調合することも可能です。しかし、作家が自分自身の「釉」を見つけ、安定させ発展させていくには、科学的・近代的な知識に裏打ちされたテスト(膨大なテストピース)を繰り返すことが必ず必要です。器の形というのはある程度決まったスタイルというのがあります。人の手の大きさや、食文化というのが大きく変わらない限りは器形や大きな変化はないでしょう。その中で作家が独特な作風を展開していくスペースが最も広く残されているのは釉(などの装飾)ではないかと思います。釉を自在に扱える作家はそれだけで魅力を感じてしまいます。

         この3人の巨匠をの作品(とその作風の展開)を見ていると、釉の魅力というものを感じざるを得ません。

         

         今回また、見るたびにため息が出る大好きな小森忍作の「辰砂長頸瓶」を見ることが出来たのが、今年の展示鑑賞の締めになりました。窯の雰囲気の変化を計算して2色に分かれたこの小さくシンプルな花瓶は本当に不思議で魅力的です。どこかで見る機会があればぜひ見ることをお勧めします。

         

         来週は今年最後の「瀬戸だより」になります。年末の忙しい(そして冷え込む)時季です。お気をつけてお過ごしください。

        | 展示感想 | 15:15 | comments(0) | - |
        瀬戸だより703号「続・やきものワールド」という話
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           12月に入っちゃいましたね。毎日忙しく過ごしております。

           

           先週は名古屋城近くの(というより、城内?)ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催中だった「やきものワールド」の話題でした。その時はまだ行っていないけど…という状態でした。で、翌日行ってきました。今週はその感想など。

           

           9時のオープン前に到着したのですが、駅から会場へは多くの人の波が続いていました。まあ、名古屋城を訪れる観光客も多いということなんですが(外国人観光客も多い)、ちょっと驚きました。ドルフィンズアリーナにもすでに入り口に列が出来ていました。それがオープン直前にはかなりの長い列に伸びていました。

           

           ドームで開催されていたころは毎年のように出かけていましたが、会場を替わってからは初めて行きました。ナゴヤドームは圧倒的な広さが印象的でした。特に観客席の上部から入場、高い位置から会場をまず眺めるという導線はインパクトあるものでした。その印象を持って入場すると、このドルフィンズアリーナの会場はずいぶんコンパクトになったという感じです。ただ、どこから見たらいいのか、ここ全体を見て回るのはどうしたらいいのか、困るくらいのナゴヤドームと比べると一店一店、一点一点、見て回るというにはちょうどいいように思いました。以前はやきもの関連以外のブースの展示も多くありましたが、会場の狭くなったおかげか整理され見やすくなったかもしれません。

           展示ですが、相変わらず九州の産地の元気のいいのが印象的です。地元以外の産地では件数も多く、目立つ存在でした。ブースもまとまって大きな面積で展示していて、なかなか見ごたえがありました。

           楽しみにしていたのは「瀬戸染付と磁祖民吉」の初期の瀬戸染付の展示でした。 ちょっと展示数が少ないというのが残念でした。しかし、民吉が九州修行から技術を伝える前の瀬戸の初期染付の展示は興味深かったです。色合いが何かパッとしない、未完成の試行錯誤の製品といったもの。それが民吉の活躍以降は一気にレベルが上がるというのがだれが見てもわかる、比較しやすい展示がされていました。返す返すももう少し資料の展示数が多ければ、さらにそれがわかりやすく思えました。そしてその中間に民吉の作品が(「伝」でも構わない)置かれたらよかったと……ただ、美術館などではない多数の人が行き交うような場所での展示となれば持ち出せる資料も限られてくるのは理解できますので、その条件の中ではいい展示だったと思います。

           

           来年以降も楽しみにしています。

           

          ■やきものワールド

          https://yakimonoworld.jp/ 

           

          | 展示感想 | 11:05 | comments(0) | - |
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          このブログの内容は加藤兆之助商店の発行するメールマガジン「瀬戸だより」のバックナンバー(保存版)になります。 文章は発行当時の内容になっています。日付など内容にはご注意ください。記事の全文あるいは一部を無断で転載・複製は禁止します。 http://web-setomono.com
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