〜せとものの話をしませんか〜「瀬戸だより」保存版

瀬戸の陶磁器店・加藤兆之助商店が発行しているメールマガジン「瀬戸だより」の保存版です。瀬戸のこと、焼き物のことなど、毎週土曜日お届けしています。
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瀬戸だより574号「すごい!モザイクタイルミュージアム」という話
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     さて、26連勝ですね。今週も勝ちました藤井聡太四段。ここまで来たら、新記録どころかぐんと記録を伸ばすところまで行ってほしいです!!

     

     

     時々、美濃の方まで仕事で出かけることがあります。その時、気になる施設がありました。モザイクタイルミュージアム。1年ほど前にオープンしています。

     

    ■モザイクタイルミュージアム

    http://www.mosaictile-museum.jp/

     

     このモザイクタイルミュージアムがある笠原という土地は、今は多治見市の一部になっていますが、以前は笠原町としてひとつの町でした。この土地で大正あたりから始まったタイル生産、今も多くのタイル工場があります。

     陶磁器といっても器だけではありません。このタイルというのも「やきもの」の分野の一部です。

     

     このミュージアム、建物自体がすごくユニークです。藤森照信氏による設計なんですが、言葉で表すなら「山をかまぼこみたいにスライスしたような土の壁」という形なんですが、うまく伝わるでしょうか。

     その中央にある小さなドア、細いくねくねとした小道が行き着くその何の表示もない小さなドアがミュージアムの入り口です。

     

     平日の昼間だったのですが、結構な数の来場者がいらっしゃいました。外観だけでなく内側も凝った作りになっていて、4階まで上がり展示を見ながら降りてくる、そんな作りでした。

     

     細かなタイルでいろいろな絵が描かれている…昔の銭湯などで見かけた懐かしい風景などのタイル絵。一般の家庭などで見かけた、浴槽、流し、かまど周りなど思い起こせばかつては様々な身近なところにタイルは使われていたことを思い出します。また、大きめもタイルに上絵で描かれた鯉や花などの絵タイルも展示されていました。建築の外壁などに使われる最近の建材としてのタイルなどまで、タイルの歴史や製造法、種類までタイルの世界の深さが体感できる展示でした。ミュージアムショップではタイルの販売、組み合わせて貼るなどの体験できる(有料)コーナーもありました。

     

     通りがかりで寄ってみた、という今回の訪問でしたが、次はじっくり時間をかけて再訪したいと思いました。

     いやあ〜、展示もそうだけど、建物に圧倒されましたよ。

    | 展示感想 | 23:11 | comments(0) | - |
    瀬戸だより573号「曜変の小宇宙」という話
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       毎週書き始めは恒例のようになっていますが、瀬戸の中学生プロ棋士・藤井聡太四段の快進撃は続いています。デビュー以来の連勝も今週は一気に23連勝に伸びました。どこまで伸ばすのか。地元のみならず、完全な社会現象ですね。


       さて、今月3日から瀬戸市美術館で開催中の「曜変・長江惣吉展」を見てきました(7月30日まで)。
       この作家さんはあの曜変天目の再現に先代から取り組んでいるという方です。曜変天目と言えば、年末に話題になったあの茶碗です。「瀬戸だより」でも話題にしました。

       

       再現された曜変の茶碗2点とその他製作された天目の茶碗が多数展示されています。
       私自身は国宝になっている3点の曜変天目を私は見たことがないので、この展示室の茶碗がどこまでそれらに近づいているのかは正直わからないところです。ただ、展示室の他の茶碗も含めてここまで研究を重ねてきた作家の気迫のようなものが展示ケースの中からでも伝わってきます。


       比較的小型のガラスケースに一点一点展示されているため、視線を左右に振って、いろいろな角度から鑑賞することは可能です。というものの、手前上から照らされる照明だけでは十分に全体を見るというには物足りなさも感じるのも正直なところです。ライトの位置を自在に変えられたら…と思ってしまいます。

       

       展示されている天目茶碗の輝き方は想像を超えるものでした。メタリックで、見る角度、光の当たる角度次第で様々な輝きを放つ不思議な世界観に引き込まれます。曜変天目を例えるのに「小宇宙」という表現を使う方がいらっしゃいますが、確かにそのように感じます。
       この茶碗を薄暗く狭い茶室の中で両手のひらに乗せて、差し込む僅かな光の下で茶碗の中に広がる玉虫色に次々と輝きを変化させる様子を覗き込む……そんな想像をしながらゆっくりと展示を見てきました。

       技術的なことも少し解説されていて、現地の調査によって2種類の土を探し出し、それを使い製作している。そしてあの不思議な輝きは蛍石を焼成後のまだ高温の窯の中に放り込みそこで発生するガスの作用で釉に変化を与えたり、被膜を生じさせたりという焼成方法にたどり着いたとのことです。


       ガスが変化を与える……それを知って展示を見直すと茶碗表面、内側の光沢部分もムラや変化が見て取れ、確かにガスの流れというものが見えた気がします。

       耀変天目という「解答」が残されていて、その解答にたどり着くヒントはない。そんな手探りの状態から土や焼成方法、釉薬など様々な要素の組み合わせを試行錯誤して来た制作過程は想像を超えるものであろうと思います。

       


       隣の展示室には瀬戸市美術館の収蔵作品展と言うことで、瀬戸にゆかりの作家の作品が多数並出られています。こちらも興味深く見てきました。鈴木五郎氏の巨大な「灰釉大土瓶」の迫力には圧倒されました。


       手の平に乗るサイズの天目茶碗の迫力、大きな土瓶の迫力、大きさの大小に関係なく感動を呼ぶこの陶芸という世界の奥深さを感じる展示でした。

       会期もまだまだ長いのでぜひご覧ください。

       

      ■曜変・長江惣吉展(瀬戸市美術館)
      http://www.seto-cul.jp/information/index.php?s=1494550758
       
       

      | 展示感想 | 13:06 | comments(0) | - |
      瀬戸だより567号「作風のベース」という話
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         市の広報誌と言うものはどこの地町村でもあると思います。もちろん瀬戸にも「広報せと」があり、月に2回届けられます。今回の5月1日号の表紙はあの藤井聡太四段。プロ棋士としてデビュー以来の14連勝の記録更新中、そして公式戦ではないですが羽生善治三冠にも勝利するなど、ニュースなどでも話題の中学生プロ棋士です。瀬戸市出身在住ということで、瀬戸市内ではもちろん大注目、よく話題になっています。

         

         どこまで連勝を続けるか、瀬戸中が藤井聡太四段の活躍に期待しています。

         

         

         さて本題。先週は瀬戸市美術館で開催中の特別展「瀬戸焼千年の歩み」を紹介しました。実はもう一つ瀬戸市美術館で同時に「第2回瀬戸・藤四郎トリエンナーレグランプリ受賞者展 加藤秀樹展」が行われています(5月28日まで)。ひとつのチケットで両方の展示を見ることが出来ます。

         

         藤四郎トリエンナーレは陶祖800年記念にスタートして、3年おきに行われる公募展。瀬戸市の粘土鉱山に参加者自らが赴き、自らの手で採集・生成した土で作品を作るというユニークなものです。昨年が2回目で、これはそのグランプリ受賞者の個展ということです。

         

         グランプリ作品の「あ うん」という作品は不思議な形の一対のオブジェとして発表の時から印象に残っていました。抜けてしまった臼歯のようにも見え、イソギンチャクのような不思議な生き物にも見えます。今回は藤四郎トリエンナーレ以外の作品も多く展示されています。日本陶芸展、みえ県展などに展示された作品などもあるのですが、同じシリーズというかよく似た形の作品群が展示室に並んでいました。

         そこに作家のこだわりを感じました。ひとつの形にこだわりながら色々変化させながら展開していくということでしょう。展示室は原始的な生物の進化の標本展示という雰囲気も感じます。

         

         作家の略歴を見ると県芸術大学で彫刻を学んだそうです。

         

         陶芸の世界で活躍する作家さんの中には学生時代は彫刻を専攻していたという方が多いように感じます。立体作品という点では陶芸と彫刻は似ているかもしれません。

         しかし、オブジェの作品を見た時に陶芸一筋に…という作家さんと彫刻を学んできた作家さんとは何かが違う印象を私は受けることがあります。たぶんそれは土という素材をひたすら見続けてきた感覚と、様々な素材を経験してきた中で土という素材に出会ったという感覚の違いのように思います。どちらも素材としての土を深く理解されていることは間違いないのですが、そこまでのアプローチの違いがどこか作品の中に見えてくるような気がします。どちらが良いか悪いかということでなく、なんとなくの話です。自分だけの感覚かもしれません。

         

         しかし、陶芸作家さんが陶芸以前にどんなことを学んできたのかというのは、必ず作品のどこかに感じられるんじゃないでしょうか。絵画なのか、テキスタイルのようなデザインなのか、染色、彫金、版画など、そこまでに身に着けてきたバックボーンのようなものがいかに重要かと思えます。

         その作家さんがどのような略歴を持っているのかというのも、作品鑑賞をより深いものにしてくれることは間違いありません。

        | 展示感想 | 13:12 | comments(0) | - |
        瀬戸だより566号「瀬戸焼千年の歩み」という話
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           瀬戸市美術館で開催中の「瀬戸焼千年の歩み −その絶え間ない進歩−」を見てきました。5月28日まで。

           

           先週は陶祖まつりだったのですが、その陶祖が活躍した鎌倉時代よりもずっと前から瀬戸では焼き物作りが始まっています。

           今回の展示でも10世紀から展示がスタートしています。展示の「第1章 瀬戸焼の始まり」、須恵器の時代から施釉がされた灰釉陶器の生産が始まった時代です。最初は瓶子や四耳壷、山茶碗などの展示が目立ち、続いて本格的な施釉陶器である古瀬戸へ繋がっていきます。

           

           「第2章 多様化する技術・表現」は桃山時代から江戸時代。茶の湯の流行とともに文字通り技術的にも表現としても急速の進歩した時代です。磁器の生産も瀬戸で始まります。今回の展示でも見ごたえのあるゾーンじゃないかと思います。茶碗や茶入れなどの茶道具から、石皿や馬の目皿などの日常雑器まで、この時代の瀬戸で生産する陶磁器の多用さが伝わってきます。

           

           「第3章 躍進する陶都」は明治以降、現代に至るまで。海外の万博などに瀬戸焼を展示し、またそこでデザイン的にも技術的にも受けた影響を陶磁器づくりに反映していく時代です。輸出が念頭に置かれ、瀬戸ノベルティやファインセラミックまで展示されています。この時代は完全に陶工から作家へと作り手の意識や作風も変化していく時代です。

           

           この千年以上の瀬戸の陶磁器の歴史。瀬戸市美術館の今回の展示では展示品の数から考えるとかなりの駆け足で、端折った感じではありますが、ざっと瀬戸焼の歴史を流れを見るのはちょうどよい感じがします。瀬戸蔵ミュージアムの展示では大きな展示室の壁をぐるっと一周して瀬戸の陶磁器の歴史をみるところもあります。行くたびに展示資料の数に圧倒されてしまいますが、今回の展示とは企画が違いますのでそれぞれ楽しめます。

           

           今回の展示の中に瀬戸から海外に輸出された展示品の中に陶器製の枕・陶枕があります。染付(銅版転写)された箱型の陶枕は自分の祖母の生家が戦前戦中に作っていたものです。なかなか目にする機会は少ないと思いますので、個人的におすすめです。

          | 展示感想 | 13:10 | comments(0) | - |
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          このブログの内容は加藤兆之助商店の発行するメールマガジン「瀬戸だより」のバックナンバー(保存版)になります。 文章は発行当時の内容になっています。日付など内容にはご注意ください。記事の全文あるいは一部を無断で転載・複製は禁止します。 http://web-setomono.com
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