〜せとものの話をしませんか〜「瀬戸だより」保存版

瀬戸の陶磁器店・加藤兆之助商店が発行しているメールマガジン「瀬戸だより」の保存版です。瀬戸のこと、焼き物のことなど、毎週土曜日お届けしています。
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瀬戸だより633号「ガラスの夏」という話
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     言いたくはないですが、暑いです。皆さん、しっかり水分とっていますか?

     

     9月のせともの祭まで、ほぼ1か月となりました。来週早々には出店場所の抽選も行われ、準備も本格的にスタートです。また、廉売市出店について場所など詳細が決まりましたら、この瀬戸だよりや当店HP、Facebookでお知らせします。

     

     さて、瀬戸はご存知の通り、陶磁器の街として長い歴史を持ちます。この陶器も磁器も生産しているというところは、他の産地とは違う瀬戸の特徴でもあります。さらにガラスの生産も…という面もあります。

     瀬戸の鉱山、もちろん粘土を産み出す山なのですが、同時にガラスの原料でもある珪砂を産出しています。近年は瀬戸に工房を開くガラス作家さんも多く、市の新世紀工芸館では陶磁器と並んでガラスを学ぶ人も多く、またその作品も展示されています。

     

     今月(今日4日スタートだ!)と来月はGlass Festival in SETOが開かれます。と言うものの、このイベントを知ったのはつい数日前に市内の施設に置かれていたチラシを見てのことです。瀬戸蔵、新世紀工芸館、瀬戸市美術館などでシンポジウムや展示、体験などが行われ、海外からも何名もの作家が招待されているいるようです。

     瀬戸市美術館での展示「ガラス表現の今 GEN―ガラス教育機関―作品展」の案内を見ていると、20年前の1988年に世界のガラス作家の集まりであるGAS(Glass Art Society)の年次総会が、日本で初めて瀬戸市で開催されたことが書かれています。それが今回の企画にもつながっていっているようです。

     このGASの総会のことはよく憶えています。その総会の内容などは知りませんが、瀬戸を拠点にされているガラス作家さんたちが中心になり、ガラスはもちろんジャンルを問わない作家たちがたくさん集まり、商店街のショーケースや店舗などを利用し街全体で行われた「道の美術館」が印象に深く残っています。私も友人とふたりで写真展を空きアパートの一室を借りて行いました。もともと社宅として作られたというアパートはそれぞれの部屋が作家の個性に染まり、楽しくすばらしい体験ができました。その展示を機会に出会い、その後につながる人の輪も出来ました。

     あの夏から20年も経つことが感慨深いです。あの企画を立ち上げた方々のパワーはすごいと感じていましたが、その後も街や商店街に展開する展示イベント、美術イベントはいろいろな方が中心になって色々と行われています。市の行っている「まるっとミュージアム」の構想にも近い部分があると思います。そういった街とアートを直結させるイベントの嚆矢となったように私は思います。

     夏の暑さを忘れる涼しげなガラスの展示。ぜひ楽しんでみてはどうでしょう。 

     

    ■「ガラス表現の今 GEN―ガラス教育機関―作品展」

    http://www.seto-cul.jp/information/index.php?s=1531820881

     

     上記以外の全体に関する情報はネット上には用意されていないようで……私が見つけられないだけかな。

    | 展示感想 | 16:25 | comments(0) | - |
    瀬戸だより630号「市之倉さかづき美術館」という話
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       時々、仕入れなどで多治見方面に出かけることがあります。瀬戸から国道に沿って多治見市に入ると(248号)、市之倉という地区となります。ここに「市之倉さかづき美術館」があります。

       いつも看板を横目に通り過ぎていましたが、先日初めて立ち寄ることができました(いったい何年前を通ってきているのか!?)。

       

       この多治見市市之倉という地域は古くからさかづき(盃)の生産が盛んで明治期には全国の盃生産の大多数占めていた、とのことです。美濃焼の産地、多治見でもかなり中心からは離れた地域ということもあり、少量の土で作ることができ、出荷もしやすいという背景もあったようです。付加価値の高い分野とも言えます。

       

       美術館の展示も小さな美しい盃がたくさん並んでいます。美術館展示室は比較的小さいのですが、展示される「品」も小さなものですから、点数も多く密度の濃い展示です。

       料亭など宴席で手に取り眺める「器」ですので、細かな装飾や模様を施すことができます。他の料理の器とは違った距離感での鑑賞を作り手も意識せざるを得ない…そのことに気が付きます。

       時代に沿った展示、他産地の盃の展示も含めて、様々な盃が並びます。その中で兵隊盃というものがありました。戦中に戦意高揚のためや除隊の記念、師団などの様々な記念に作られたという盃です。その記念を示す文字のほか、日の丸や戦車など、人物の写真、様々な時代を感じる絵柄があります。その盃を見ているとその戦争の時代に生きた様々な人の思いが伝わってくるようです。

       

       ここの美術館は盃の展示だけではなく2階は巨匠館として地元にゆかりの人間国宝や巨匠の作品が常設で展示されています。加藤 土師萌・五代 加藤 幸兵衛・荒川 豊蔵・加藤 唐九郎・塚本 快示・加藤 卓男・鈴木 蔵・加藤 孝造の8名の作家の茶碗などの展示は狭い空間の中で圧倒的な迫力を感じます。

       

       展示室を上回るほどの面積のあるミュージアムショップでは今作られている器の数々が手に取って見ることができ、これはまた別の刺激を与えてくれます。

       

       いつも前を通り過ぎていたことが悔やまれる美術館でした。

       

      ■市之倉さかづき美術館

      http://www.sakazuki.or.jp/

       

      | 展示感想 | 17:02 | comments(0) | - |
      瀬戸だより628号「横山美術館に行ってきた」という話
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        展示室。館内の撮影はOKでした。

         

         昨年10月、名古屋市内に新しい美術館が開館しました。明治以降に海外に向けて輸出された陶磁器を収集展示するという横山美術館です。個人コレクションがベースになっている美術館というのはそのコレクターの趣味や興味を感じられる公立の大きな美術館と違った面白みがあるといつも感じています。

         気になる美術館。いってきました!

         

         美術館は名古屋市東区葵にあります。地下鉄の新栄町や高岳の駅が最寄になります。名古屋の街の中心ですね。

         この名古屋市東区はかつては陶磁器の生産が盛んで輸出向けの製品が多く作られ、海を渡っていきました。この美術館の収蔵品も多くが海外からの里帰り品とのことです。

         名古屋の中心が陶磁器の生産拠点だったというと意外かもしれません。瀬戸をはじめ各地の産地から集められた白生地の磁器に細かな上絵付を施して輸出というのがこの辺りで多かった仕事と思います。ノリタケも最初は各地にあった生産拠点をここに集約したということもあったようです。輸出が盛んにおこなわれ始めた明治期は輸出先商社などからのオーダーを各地の産地に指示して作らせるよりも、この土地で生産する方が効率よかったんでしょうね。

         

         この横山美術館の収蔵品も幕末から明治の初めに海外の博覧会に出品する中で輸出品としての評判人気を高めた当時の陶磁器の魅力を伝えてくれています。初期の輸出品は技巧的というか、やりすぎくらいにみえる製品が多く見られます。そこからは当時の職人の技巧のレベルの高さもあり、さらに海外を舞台に品物を作るというモチベーションの高さも感じます。海外の日本趣味のブームもあり、モチーフも(国内向け以上に)日本的なものになっています。

         

         これらの製品はほとんどが輸出された関係上ほとんど国内には残っていない、また生産していたメーカーもその後解散などして資料も残っていないことも多いそうです。そうした明治以降の日本の外貨獲得に活躍した陶磁器たちを海外から買い戻し里帰りさせこうして美術館を作り展示する……個人でそれを行うことに大変さを考えると頭が下がります。

         

         

        ■横山美術館

        https://www.yokoyama-art-museum.or.jp/

         

         今回は企画展として「時を超え心揺さぶる カップ&ソーサー展」が開催されていました。オールドノリタケの製品を中心に数多くのカップとソーサーが並んでいました(明日1日まで)。

         その次の企画展は8月4日からの「セト・ノベルティ展」となるようです。輸出の花形だった瀬戸のノベルティ。その展示も楽しみです。

        | 展示感想 | 16:31 | comments(0) | - |
        瀬戸だより624号「ガラスの魅力」という話
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           6月です。

           瀬戸市新世紀工芸館で開催中の企画展「井上剛 谷口嘉 集散する光」を見てきました。この企画展はガラスの展示で、すでに3月31日から始まっていたのですが、なかなか見に行けず、展示期間の後半になってしまいました(6月17日まで)。

           

          ■井上剛 谷口嘉 集散する光(瀬戸市新世紀工芸館)

          http://www.seto-cul.jp/information/index.php?s=1519896052

           

           二人のガラス作家による作品が並びます。井上さん、谷口さんとも展示資料の略歴を見る限り特に瀬戸とは関わりのない作家さんの様です。

           井上さんの作品は1階展示室の比較的小さな作品や大きな輪のオブジェ、ゲートのような作品まで、「鋳造」によって製作されています。展示ケースの中の作品はガラスのブロックの組み合わせ(様々な形もある)がケース下から照らされています。その透過してくる光によって表面のテクスチャーやガラスの中に封じられた気泡などが見ることができます。

           谷口さんの作品は壁に何かの標本のようにピン(釘)でガラス片や三角柱のプリズムのようなガラスが無数に(浮かぶように)留められています。展示照明によりそのガラスやピンの影が壁に映し出されています。

           二人の作品は展示のタイトルの示すように「集散する光」がテーマです。

           

           普段私たちは陶磁器の器を扱う仕事をしています。陶磁器の表面の輝きやざらつき、触れた時の感覚には慣れ親しんでおり、ある程度は敏感になっているのですが、ガラスという素材の持つ「透過する」という特性を今回の展示で再確認したような気がします。透過という特性はガラスの描き出す(ほかの素材にはない独特な)「影」の美しさとして現れます。光と影の紡ぎだす素材の魅力でしょう。

           残念に感じたのは展示室内に用意される光は展示ライトの画一された光であり、例えば一日の中で様々な変化を見せる窓からの光など、様々な質と強弱を伴った光を浴びることにより変化を想像するしかないこと。たとえ小さな作品であっても窓際に置かれたガラス作品は(ガラスのコップに注いだ水の影ですら)時間、季節によってより多くの魅力を放ってくれる……ガラスの魅力を感じてきました。

          | 展示感想 | 17:48 | comments(0) | - |
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