〜せとものの話をしませんか〜「瀬戸だより」保存版

瀬戸の陶磁器店・加藤兆之助商店が発行しているメールマガジン「瀬戸だより」の保存版です。瀬戸のこと、焼き物のことなど、毎週土曜日お届けしています。
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瀬戸だより722号「暇過ぎてネットを見ている」という話
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     週末は雨。ここ数日の雨と風で瀬戸の桜もすべて散ってしまうように思います。今年は長く咲いていたという印象ですが、花見も……ねえ。今は我慢の時です。ステイホームでがんばりましょう。

     

     家の中で過ごす時間が長くなると、どうしてもテレビやインターネットに費やす時間も長くなります。まあ、テレビは繰り返しウイルス関連のニュース話題が流されますので、気持ちもふさがりがちになります。そんな中、ネット動画を見ていると陶芸関係の動画も多いことに気が付きます。

     あたりまえですが、ネットというのはすごいものです。日本国内はもちろん、地球のはるか遠くでろくろを回す姿すら、家にいて見ることが出来るわけです。インスタグラムで何気なく見ていた外人さんの作業、あらためて見直すと南アフリカからの投稿だったりということもありました。

     

     国内でもあちこちにある陶芸教室だったり陶房だったりが、初心者向けのものからかなり高度な内容まで配信したりしています。長年疑問に思っていたことが解決したり、また今後作りたいものへのヒントがあったり、なかなか興味深いものがあります。半面、「えっ、そのやり方で大丈夫なの?」と思うものも正直あります。

     

     陶芸、ものづくりというのは、結局ひとりでその現場でものに向き合うことになります。そこで見つけていく(身に着けていく)ノウハウというのは、「自己流」になりがち(良くも悪くも)です。まあ、そういう繰り返しが面白く、個性や作風の展開につながっていくのは間違いないです。自分のやり方とは違っていても、同じ結果にたどり着ける方法はいくらでもあるので、新鮮に感じます。

     しかし、見ていて何か違う、ちょっとおかしいということもたまにあります。そうならないためにはやはり基礎が大切になってくると思います。なぜこの作業が必要か、このひと手間にはどんな意味があるか……それらがなぜそうなるかを科学的な内容を含めて最初に身に着けているかが作業過程で見えてくるように思います。

     というものの、自分の作業過程も他人から見たら、そこそこいいかげんな仕事ぶりに見えるんだろうなと反省しております。

     

    | 作る | 14:49 | comments(0) | - |
    瀬戸だより721号「ドベ」という話
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       さあ、家の中で何をして過ごすか?過ごし方を考える週末です。

       

       「ドベ」という言葉があります。名古屋弁としても紹介されることもありますが、西日本では使われることが多いようです。東日本では「ビリ」に当たる言葉です。最下位という意味です。瀬戸の陶器作りの現場では別の意味で使われます。重要な役割をするものです。

       

       器を作る際に土と土をくっつける時、例えばマグカップの取っ手をくっつけるなどの作業の時、接着剤の役割をするのがドベ。やわらかく水に溶かした粘土です。瀬戸の言葉でその様子を伝えるなら「シャビシャビ」の状態、最近の言い方なら「ジェル状」ということでしょうか。

       ドベなしで作業すると乾燥途中でぽろっと外れたり、焼きあがった後でも外れやすかったりします。使い方は接着面にキズをつけ、そこに糊を使うのと同じように筆でペタペタと塗ってくっ着ける。ちょっとした手間ですが、大切な作業です。

       

       「ヌタ」と呼んだり「ノタ」と言ったりもします(自分の中ではヌタです)。呼び方がいろいろあるのはものすごく身近なものであり、それぞれの陶房、作業場の中だけで使われてきたという背景もあるからと思います。陶房の中だけなら「アレ」で通じてしまうし、「名前なんてあったっけ」になってしまうかもしれません。

       

       陶芸をされている皆さん、陶芸教室に通っている皆さん、何て読んでいますか?陶芸に限らず、身近過ぎてそれぞれの家庭独自の呼び方があるものって他にも何かあるかもしれませんね。うちだけの呼び方のあるもの、そんなものを探すっていうのも、週末の家の中でのちょっと楽しい過ごし方かもしれません。

      | 作る | 14:51 | comments(0) | - |
      瀬戸だより712号「世界中でろくろは回る」という話
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         さて、今週は取り留めのないことを書きます。答えもありません。「えーー!そうなんですか!?」という方も、「そんなのどうでもいいじゃん」という方も、「理由知ってるよ」の方もいるかもしれません(理由知ってるよの方はぜひ教えてくださいね)。

         

         ろくろです。くるくる回るろくろです。

         上から見て時計回りに回ります…というのがよく知ってるろくろです。という書き方をするのは「よく知らないろくろ」があるんだな、と鋭い人は感じている……そのとおり。実は欧米のろくろは反時計回りの回転なんです。反対回転、不思議です。

         「外国では反対回りだよ」というのは学生時代にも聞いたことがあり、ああそんなものなのか、と思っていました。ところが最近、実際にインスタグラムなどのSNSで海外の陶芸作家(アーティストって言った方がいいのかなぁ、この場合)の製作過程の動画を見る機会が増えるにつれ、この「欧米ろくろ反対回り」が気になって気になって…。

         欧米はほとんどの人が左利きなんだよというわけでもないでしょう。道具の使い方も違ってきます。変な気分です。

         

         ろくろと言う道具は最初は紐づくりで粘土を積み上げていくなか、粘土を回した方が便利だなあとか思って下に大きい葉っぱとか敷いて、ずりずり回しながら作業したのが始まりじゃないかと想像します(あ、これ勝手な想像ですよ)。だとすると、右手で葉っぱの端っこを持って手前に引きながら回すのが自然じゃないですか?ほら、中華料理屋の回る丸いテーブルだって右手でスッと回すと自然に時計回りに回るのと同じ。反時計回りに回すようになったきっかけは何なんでしょうね。

         そもそも、ろくろの回転が違うというのは、日本などのろくろとヨーロッパのろくろと言うのは全く違ったルーツを持っているということなんでしょうか?この謎の回答を持っていらっしゃる方、教えてください。

         たぶん、自分がそう感じるように欧米の陶芸家が日本のろくろ動画見て、不思議な気分になっているだろうな、ということは間違いなく想像できます。

         

         反対回りのろくろはインスタグラムで#potterywheelなどで検索すると出てきますよ。

        | 作る | 15:04 | comments(0) | - |
        瀬戸だより700号「織部とクエン酸」という話
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           「瀬戸だより」。みなさんの応援で今日で700号になりました!

           個人が書いているメールマガジンですので、なかなか伝えたいことがある時ない時、皆さんの興味があるものないもの、時々によりいろいろですが、これからもよろしくお願いいたします。

           

           

           年末が近づくにつれ、干支の置物や御題茶碗の時期になって来ています。サンプルが遅れている作家さんもまだまだいらっしゃって(もう!!)、思うように進まずイライラは毎年のことです。例年の干支は「子」、御題は「望」となっています。

           

           諸事情から今週は織部の置物を当店の窯で焼いております。うちには小さな電気窯があります。その窯のメーカーさんの電気窯としては一番小型のものだったと思います。それでも自作の何かを焼くには丁度いいサイズではあります。たぶん趣味の陶芸の窯を欲しいという方にはちょうどいいくらいの大きさと思います。とは言っても今回のような量では回数を重ねて対応するしかなく、2日おきに4回の焼成(今4回目が740度を超えたあたりです)を行っています。何かにつれ、この小さな窯であっても助けられることしばしばです。

           

           以前にも書いたことがありますが、織部は窯から出たそのまま完成とは行きません。窯出し直後の織部は表面に酸化被膜があり、光を当たると油膜のような輝きを見せています。それを除去する作業が必要となります。

           昔からの(伝統的な)方法は栃シブを使う(うちも基本的にはこれです)やり方になります。栃のドングリを集めて、そのハカマの部分を水に浸けます。それで出来た真っ黒な水に織部の器などを浸けるわけです。夏場なら1晩から1昼夜というところでしょうか。この方法のメリットはシブが表面の貫入(釉薬のひび割れ)に入り込み独特の風情が出てきます。織部以外でも黄瀬戸や灰志野の貫入のシブ入れというのもこの栃渋で行います(もちろん墨を使ったりと他の方法もあるんでしょうが)。

           他には塩酸を使う方法もあります。貫入にはシブは入りませんが、時間はかかりません。問題は塩酸の入手が簡単ではない、扱うのも危険、しっかりとした水洗いが必要など。最近は入手がなかなか大変とも聞きます。

           

           さて、今週は織部の焼き上がりとともにその栃シブ作業を行っているのですが、冷え込むようになったこの季節では水温が低くなかなかその効果が上がってきません。窯元などではその対策で水中に投げ入れるようなヒーターを使ったりされているようです。うちにはヒーターなどはありません。では、お湯を入れて温かくするというのも、どんどん薄めていくことになりますのでそれも出来ません。塩酸ならその時その時でお湯で希釈することになりますので、調整できそうですが急いで入手するのも大変そうです。

           そこでちょっと調べたら「クエン酸」というのが候補に上がってきました。クエン酸。食品にも使われるすっぱいやつです。口に入れられるくらいですので安全です。どこで買えるんだということですが、一番手軽なの百均です。ダイソーの掃除用洗剤のコーナー。酸性の洗剤としても使われるんですね。そこで売っているクエン酸一袋でバケツ2杯分くらいの温水(かなり熱い)に溶かして、織部を浸けてみました。効果十分、数時間で酸化被膜はとることが出来ました。まあ、外で作業していますのであっという間に水温は下がってしまうことを考えればもっと短時間でも大丈夫でしょう。栃シブと違い透明な液ですので、変化も観察しやすいとも言えます。

           コストと安全性、そして何より手軽さを考えると、これからは栃シブとクエン酸の併用で織部の処理はいこうと思った次第です。

           

          | 作る | 11:14 | comments(0) | - |
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          このブログの内容は加藤兆之助商店の発行するメールマガジン「瀬戸だより」のバックナンバー(保存版)になります。 文章は発行当時の内容になっています。日付など内容にはご注意ください。記事の全文あるいは一部を無断で転載・複製は禁止します。 http://web-setomono.com
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