〜せとものの話をしませんか〜「瀬戸だより」保存版

瀬戸の陶磁器店・加藤兆之助商店が発行しているメールマガジン「瀬戸だより」の保存版です。瀬戸のこと、焼き物のことなど、毎週土曜日お届けしています。
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瀬戸だより556号「土練機」という話
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    瀬戸蔵ミュージアムに展示されている土練機(真空土練機)

     

     今朝は雪がうっすら積もった瀬戸でした。寒い日が続きます。

     我が家も風邪をひいたり、インフルエンザになったりと、体調を崩しがちになっています。みなさんも体調に気をつけてお過ごしくださいね。

     

     陶芸をされている方にはつらい季節です。氷のように冷えきった粘土。ろくろの横には昔から「かんぶろ」と呼ばれる木の桶が置かれています。かんぶろには昔なら炭を、今なら電気のヒーターを入れるようになっていて、ろくろ作業で水を手につけたり凍てつく手を温めたりしながらものを作ってきました。今でも昔ながらのかんぶろを愛用している作家さん、職人さんは多くいらっしゃいますね。

     実際の陶磁器作りの現場ではろくろの作業以外でも冷たい土を触る作業はもちろんたくさんあります。土を錬る作業は文字通り土に触り続ける作業です。土を錬るというのは、作業しやすい固さ(柔らかさ)に調整する、土全体が同じ固さになるようにする役割があります。さらに一度使用した粘土を再生する際にも錬る作業は必要です。

     陶芸教室に通ったという方なら聞いたことがあると思いますが、菊練りという土の中に含まれる空気を出すための練り方もあります。

     考えると陶芸という作業の多くの部分は土の管理ということに費やされているわけです(しかも冬は冷たい冷たい作業…)。

     陶芸のそういうつらい作業を助けてくれるのが「土練機」というものです。形式はいろいろあったようですが、今普通に見かけるのは大砲ような形でしょうか。大砲の胴の部分の上から粘土を入れると、砲身(筒)の中で金属製の羽で練りあわされ、筒の先から円筒状の粘土が出てくるというものです。さらにこれに真空ポンプをつけた真空土練機というものもあり、土の中の空気を抜く作業(菊練り)まで行ってくれます。

     

     土練機があるなしでは作業の効率が全く違いますね。というか基本的には必須と言ってもいいかもしれません。

     

     小さな電気窯を置いた我が作業場には土練機はありません。どうしても土の管理に手間を取られてしまうわけで、ずっと土練機がほしいと思っていますが、結構高価なわけでなかなか入手できないのが、実はずっと悩みです。

    | 作る | 23:25 | comments(0) | - |
    瀬戸だより548号「より土」という話
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       今週は瀬戸でも雪がちらつきました。12月も半ば過ぎ、冬が深まってきた感じがします。

       当店の年末の繁忙期もじょじょに落ち着いてきました。

       

       インフルエンザも流行り始めたようです。お気を付けて年末をお過ごしくださいね。

       

       今日は「より土」という土の話。

       

       ざっくりとした土で、焼き縮みも少ないものです。それ自体が製品になることはありません。

       それが焼き上がったものを目にすることは一般にはないのではないでしょうか。窯出しの後は役目を終えます。

       

       瀬戸では「より土」と呼んでいますが、一般的には道具土と呼ばれることが多いのでしょうか。

       窯の周りで道具として使われる土、そんな土です。

       

       具体的には、窯に製品を詰める時、流れやすい釉を使っている場合など釉薬が直接棚板に付かないように製品に下に何カ所か間にはさんで浮かせるように(あるいは円盤状にして敷いたりして)使ったりします。焼き上がったあとは、軽石のようになるので、簡単に外すことが出来るので後始末も簡単です。

       最近は窯の中で積み上げる棚板も柱となるツクも丈夫でゆがみも少ないのですが、昔はそういうゆがみや隙間を補正するのもより土の役目でした。

       

       作家さん、窯元の窯の周りでは当然よく見かけるより土。作家さんの作風などによってはまさにマストアイテムと言っても過言ではありません。

       

       窯の高温の中で製品を支え、窯を守り、そして姿は一般には見せない……本当により土って、縁の下の力持ちという呼び名がぴったりと思いますね。

      | 作る | 20:58 | comments(0) | - |
      瀬戸だより540号「焼き直す」という話
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         今週は夏のように暑い日がありました。とは言うものの、日が沈むとひんやりしてきたりで半袖を着ていてもいいのか、長袖に切り替えるか、着るものに迷う時期ですね。


         カレンダー上ではそろそろ干支の置物や御題茶碗など年末年始の商品のサンプルの完成や注文出荷が始まる時期ですが、こう暑くては気分が出ないところもありますね。こういう年は気温が急に冷え込むと注文が一気に入り始めるパターンもありますので、準備は進めておかなきゃいけません。

         

         このところ、当店にある(ごくごく小さな)電気窯で陶器の焼き直しを何度か行っています。
         焼き直しというのはいったん本焼成した陶器をもう一度焼くという(文字通りの)作業となります。焼き直しが必要になる理由というのはいろいろあるのですが、まあ釉薬の修正というのが多いですね。こうした修正のための焼き直しというのは、一般の方が想像するより頻繁に行われているように思います。手間隙かけて作ってきた器です。その失敗が一窯単位ともなれば、なんとか修正して救い出したいという気持ちは十分にわかります。
         もちろん、再度焼くことによる独特な釉薬の発色などを狙っての積極的な焼き直しもあります。まあその場合は焼き直しじゃなく二度焼きと言った方がいいですね。

         

         実際には一部釉薬が掛けたつもりが掛け残した場所があった、とか窯の温度が(なにかの原因で)上がりきらず釉薬が完全に溶けていなかったなんてものの修正が多いでしょうか。
         窯の焼成の雰囲気(酸化還元)が違って予想通りの発色が出なかったというのも聞きます。この場合は焼き直しで修正できる場合できない場合があるようです。


         掛けた釉薬の層が薄すぎて発色が悪かった…この場合は釉薬をもう一度塗り直す必要が出てきます。焼成を一度終えているため、表面には(薄くても)ガラス質のコーティングがされているわけで、素焼(あるいは生の)素地に釉を掛けるのとは勝手が違います。

         

         今回は溶け切らなかった釉の上に別の釉薬を掛けて焼き直すという作業をしています。もちろん普通に釉薬を掛けてもいったん焼成された釉薬の上では弾いてしまいなかなかうまく掛けにくいものです。以前、作家さんからそんな場合のコツとして、品物を窯にもう一度入れ100度以上まで温め。熱いまま筆で釉薬をペタペタとのせていくとうまくいくと聞いたのを思い出し、今回もそのやり方で釉をかけ直しました。熱いですよ、これは。革の手袋を二重にして作業したのですが、持っている品物から熱さが伝わってきます。釉の水分の蒸発が早いので、確かに塗りやすいと感じました。


         焼き直しの窯は先程1250度まで達しましたので、火を止めました(と言うとかっこいいですが、電気窯なのでスイッチをパチンとオフにしただけです)。
         一体どんな感じに焼きあがって出てくるか、明日の午後まで(窯を開けられるようになる時間)どきどきわくわくです。

        | 作る | 13:28 | comments(0) | - |
        瀬戸だより539号「道具について」という話
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          すり鉢に「目」を刻む道具

           

           毎週のように来ていた台風もやっと一段落したようですね。すっかり季節は秋になったようです。

           

           今週はふとしたことから、瀬戸の本業の仕事を垣間見る事になりました。

           「本業」というのは、江戸時代に磁器の生産技術が瀬戸に伝わり磁器の生産が始まった際、磁器を「新製焼」、従来からあった陶器を「本業焼」と区別したことから「もともとの瀬戸の陶器作り」の仕事という意味です。茶道具、器から生活雑器の類まで幅広く生産されています。

           妻の実家も本業の窯元で主にすり鉢を生産していました。もう30年ほど前には生産をやめたのですが、窯や作業場はほぼそのまま残されています。昔からお世話になっている作家さんがすり鉢の作り方(主に櫛目の入れ方)を知りたいということで、一緒に義父の旧工房を訪ねることになったのです。

           

           この旧工房には何度も行っていますが、こうしてすり鉢作りのことを詳細に聞いたことがなかったのでとても新鮮でした。

           すり鉢に櫛目を入れる道具自体は、銅板を切り、ヤスリで櫛目を削り出し、鉢の内側のアールに合わせて曲げるという、すべて手作りで作り出したものでした。材料の銅板も銅版印刷(呉須などを器にプリントする技法)の銅板の再利用です。

           これに限らず陶器作りの現場ではほぼすべての道具は自らによる「手作り」がほとんどです。ろくろのヘラやシッピキ、トンボなどはそうですし、釉掛けの道具なども作り手それぞれが工夫したものが多いです。

           瀬戸窯業高校専攻科で陶器作りを学んだ時もまず道具を作ることから始まったのを思い出しました。マガリやヘラなど切ったり削ったりしていました。

           道具は手の延長。指先のように自在に使うには、自分の手、クセなどに合わせて作らなければなりません。実際、腕のいい職人さん、作家さんの仕事場を見ると実に道具も美しく作っている事が多いですね。

           瀬戸でも道具を販売するお店はありますが、そこでも細かなオーダーに合わせて道具を調整・製作してくれますし、入手した道具に手を加えて自分に合わせることは普通に行われています。

           腕にいい作り手は腕のいい道具の作り手でもある…これは間違いないようです。

           

           昔ながらのすり鉢の生産は瀬戸ではほぼ行われていないと思います(織部など器としての用途を兼ねたすり鉢はあります)。義父の話を聞きながら、瀬戸「本業」の仕事の魅力を再発見した昨日の午後でした。

          | 作る | 13:57 | comments(0) | - |
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          このブログの内容は加藤兆之助商店の発行するメールマガジン「瀬戸だより」のバックナンバー(保存版)になります。 文章は発行当時の内容になっています。日付など内容にはご注意ください。記事の全文あるいは一部を無断で転載・複製は禁止します。 http://web-setomono.com
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