〜せとものの話をしませんか〜「瀬戸だより」保存版

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644号「織部の処理を考える」という話
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     さて、先週は瀬戸を代表する釉薬のひとつ「織部」の話を書きましたが、その続き。

     

     納期というものがあります。出来上がりを納める日ですね。どんな仕事にもあると思います。考えてみると小学校の夏休みの宿題は9月1日に提出ですよ〜、がそもそも宿題の納期なわけで、私たちは長い期間、納期という束縛の中で成長してきたことは間違いないようです。
     この日までに仕上げて渡す……そのためには段取りがいるわけで、11月10日にお客様にお渡しするとなると、9日か余裕を持って8日までには包装・梱包して発送する…となると、11月はじめに窯元から受け取りたい、あー!それまでに木箱など用意しなきゃ……とか逆算します。窯元さん作家さんから「今度の窯、11月1日に窯出しできるように11月29日には火を入れるからね(ここも納期のための逆算)」と言われるとちょっとホッと出来ます。最近は不景気で窯を焼く回数が減っているので、タイミングが悪いとたいへんなことになります。

     

     ところがこれが織部の器だったりすると1日に窯出しされても実際完成して窯元から出荷されるのはその数日後になってしまいます。2〜3日のタイムラグ。織部は窯から出た後に処理が必要なためです。

     織部は窯から出た直後は酸化皮膜が表面を覆い、油膜のようなギラギラした変なツヤがあります。それを取るために「酸」により処理をして落ち着かせるひと手間が必要です。瀬戸では伝統的にトチ渋を使うことが多いです。秋のどんぐりの季節に栃の実に付いている袴の部分(どんぐりのベレー帽みたいな部分ね)を集めて、水に漬け込み出来た真っ黒な液に器を沈めて膜を処理します。夏なら一晩、冬なら一昼夜(本当に寒い季節は温めることも)は沈めます。その後、水洗いして完全に乾くまで干す…で完成。時間がかかりますね。

     この方法の良いのは貫入に渋が入り独特の風合いが出ることです。でも、その必要がない場合、渋が素地に入るのが嫌だ(汚れて見える)という場合は塩酸を薄めて処理に使うこともあります。この方が膜を取るという処理では時間がかかりません(もちろん水洗いと乾燥は必要です)。最近は塩酸の入手が難しくなっていますので(危険ですから)、クエン酸などで代用される方もいるようです(こちらは酸でも食品で使えるくらい安全で安価です)。

     というわけで、織部の後処理は気温や天気でかかる時間も左右されるので、出来上がりは余裕を持って納期の計算が必要です。

     伝統的な手法で織部を焼いている瀬戸の作家さん・窯元では工房のどこかにトチ渋の黒い液が入った桶があると思います。数をこなしているところでは古い風呂桶を置いていることもしばしばです。


     来月(11月)10日・11日の土日は瀬戸の品野・赤津・水野の各地区で恒例の「ゆるり秋の窯めぐり」のイベントがあります。普段見られない工房などを気軽に訪ねられるイベントです。そんな時にこの渋の入った桶などもちょっと確認してみるのも面白いかもしれません。

     

    ■ゆるり秋の窯めぐり
    http://www.seto-marutto.info/event/kamameguri/
     
     

    | せともの | 21:54 | comments(0) | - |









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