〜せとものの話をしませんか〜「瀬戸だより」保存版

瀬戸の陶磁器店・加藤兆之助商店が発行しているメールマガジン「瀬戸だより」の保存版です。瀬戸のこと、焼き物のことなど、毎週土曜日お届けしています。
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瀬戸だより624号「ガラスの魅力」という話
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     6月です。

     瀬戸市新世紀工芸館で開催中の企画展「井上剛 谷口嘉 集散する光」を見てきました。この企画展はガラスの展示で、すでに3月31日から始まっていたのですが、なかなか見に行けず、展示期間の後半になってしまいました(6月17日まで)。

     

    ■井上剛 谷口嘉 集散する光(瀬戸市新世紀工芸館)

    http://www.seto-cul.jp/information/index.php?s=1519896052

     

     二人のガラス作家による作品が並びます。井上さん、谷口さんとも展示資料の略歴を見る限り特に瀬戸とは関わりのない作家さんの様です。

     井上さんの作品は1階展示室の比較的小さな作品や大きな輪のオブジェ、ゲートのような作品まで、「鋳造」によって製作されています。展示ケースの中の作品はガラスのブロックの組み合わせ(様々な形もある)がケース下から照らされています。その透過してくる光によって表面のテクスチャーやガラスの中に封じられた気泡などが見ることができます。

     谷口さんの作品は壁に何かの標本のようにピン(釘)でガラス片や三角柱のプリズムのようなガラスが無数に(浮かぶように)留められています。展示照明によりそのガラスやピンの影が壁に映し出されています。

     二人の作品は展示のタイトルの示すように「集散する光」がテーマです。

     

     普段私たちは陶磁器の器を扱う仕事をしています。陶磁器の表面の輝きやざらつき、触れた時の感覚には慣れ親しんでおり、ある程度は敏感になっているのですが、ガラスという素材の持つ「透過する」という特性を今回の展示で再確認したような気がします。透過という特性はガラスの描き出す(ほかの素材にはない独特な)「影」の美しさとして現れます。光と影の紡ぎだす素材の魅力でしょう。

     残念に感じたのは展示室内に用意される光は展示ライトの画一された光であり、例えば一日の中で様々な変化を見せる窓からの光など、様々な質と強弱を伴った光を浴びることにより変化を想像するしかないこと。たとえ小さな作品であっても窓際に置かれたガラス作品は(ガラスのコップに注いだ水の影ですら)時間、季節によってより多くの魅力を放ってくれる……ガラスの魅力を感じてきました。

    | 展示感想 | 17:48 | comments(0) | - |
    瀬戸だより620号「越中瀬戸焼」という話
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       5月です、ゴールデンウイークど真ん中、こどもの日です。皆さんどうお過ごしですか?

       

       現在、瀬戸市美術館で開催中の「越中瀬戸焼ー桃山から現代へー」を見てきました(6月10日まで)。

       越中(富山県)で焼かれている瀬戸焼……?不思議な展示です。

       

       もともとは天正16年(1588年)ころに瀬戸焼の陶工・小二郎が前田氏によりこの土地に招かれ、「瀬戸焼」を生産を開始、以後加賀藩の御用窯として発展、今も4軒の窯元5人の陶工が活動を続けているとのことです。

       

       私自身、この越中瀬戸焼というのは聞いたことがなく、その成り立ちそして今も生産が続いているというのが興味深いと感じました。

       古いものは当時の瀬戸の瀬戸焼と特徴を同じくし、鉄釉の黒や茶色の釉薬が掛けられています。日常の器や花器から茶道具まで多岐にわたる生産もよく似ています。

       

       鎌倉時代に釉薬を施した最先端の陶器を産出した瀬戸。その技術が各地に伝えられていくのは不思議ではありません。今回の越中瀬戸焼の小次郎のように陶工が各地に移ることもあったでしょうし、瀬戸に技術を求めて来るものもいたのでしょう。

       瀬戸で作られた焼き物「せともの」が一般的に陶器全体のこと意味する「せともの」と呼ばれるようになったのも、単純に瀬戸で作られた製品が広まっただけでなく、今回のような技術の伝搬で各地で瀬戸の焼き物が各地で焼かれたというのもあると思います。つまり、「瀬戸で作られるような釉の施された『せともの』がうちの土地でも出来るようになった」という流れも少なからずあったはずです。

       

       展示は現代の富山で作られている作家の作品までされています。その作品からもなんとなく瀬戸と同じ雰囲気を感じてしまうのも興味深かったです。

       その焼き物が作られる土地は「瀬戸」という地名がついているようです。いつかその土地も訪れてみたいと感じさせる展示でした。

       

      ■「越中瀬戸焼ー桃山から現代へー」瀬戸市美術館

      http://www.seto-cul.jp/information/index.php?s=1522977234

       

       展示点数は少なめですが、その分2階の展示室は瀬戸市所蔵の絵画の展示となっています。

      | 展示感想 | 23:15 | comments(0) | - |
      瀬戸だより612号「釉薬マニアにオススメ」という話
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         愛知県陶磁美術館で開催中の「京都市陶磁器試験場の釉薬研究と小森忍 ー寄贈・堀田毅コレクションを中心にー」を見てきました。

         京都市陶磁器試験場は明治期に創設された釉薬など技術的な研究やデザイン的改良を目的に創られた施設で国内外より様々な参考品を収集・研究、当時の日本の陶磁器に大きな影響を与えています。その研究の中心にいたのが小森忍で、試験場退職後満州での古陶磁研究を経て、一時期は瀬戸でも作家活動をしていました。その時代の瀬戸とも交流があった作家さんです。

         

         たぶん、その頃は私の祖父(兆之助)とも交流があったようで、当時住んでいた家には小森忍作のタイルが外壁や浴室にあったと父から聞いたことがあります(自分はその家に行ったことはありません)。古陶磁に目の利く祖父でしたので、いろいろ意見交換などしていたかもしれません。

         

         今回の展示は小森忍の作品だけでなく、京都市陶磁器試験場の収集品や試作品も多数展示されていて、さらに試験場で当時在職していた河井寛次郎や濱田庄司などの作品も鑑賞できます。

         テストピースの展示もありますが、試作品は試作の域を超えてそのものが作品として十分な魅力を持っています。釉薬の試験のための収集試作ですので、展示室全体が様々な釉薬の魅力にあふれています。

         釉薬マニアなひとには面白い展示となっています。特に釉薬でも辰砂展示が多く見られ(自分の瀬戸窯業高校専攻科の卒業研究はまさにそれだった)、辰砂に興味がある方には様々な技法の変化やそれによる発色の違いなど楽しめると思います。

         

         展示解説によると小森忍は釉を見ただけで化学式や調合割合などをすぐに言い当てたとあります。それがどのくらいすごいことかが釉調合の経験がある方にはわかってもらえるはずです。

         

         陶磁美術館としては点数の少なめの展示になっていますが、内容は濃いです。常設展示と合わせて楽しめば時間がいくらあっても足りません。

         

        ■京都市陶磁器試験場の釉薬研究と小森忍

        https://www.pref.aichi.jp/touji/exhibition/2017/t_komori/index.html

        | 展示感想 | 00:53 | comments(0) | - |
        瀬戸だより574号「すごい!モザイクタイルミュージアム」という話
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           さて、26連勝ですね。今週も勝ちました藤井聡太四段。ここまで来たら、新記録どころかぐんと記録を伸ばすところまで行ってほしいです!!

           

           

           時々、美濃の方まで仕事で出かけることがあります。その時、気になる施設がありました。モザイクタイルミュージアム。1年ほど前にオープンしています。

           

          ■モザイクタイルミュージアム

          http://www.mosaictile-museum.jp/

           

           このモザイクタイルミュージアムがある笠原という土地は、今は多治見市の一部になっていますが、以前は笠原町としてひとつの町でした。この土地で大正あたりから始まったタイル生産、今も多くのタイル工場があります。

           陶磁器といっても器だけではありません。このタイルというのも「やきもの」の分野の一部です。

           

           このミュージアム、建物自体がすごくユニークです。藤森照信氏による設計なんですが、言葉で表すなら「山をかまぼこみたいにスライスしたような土の壁」という形なんですが、うまく伝わるでしょうか。

           その中央にある小さなドア、細いくねくねとした小道が行き着くその何の表示もない小さなドアがミュージアムの入り口です。

           

           平日の昼間だったのですが、結構な数の来場者がいらっしゃいました。外観だけでなく内側も凝った作りになっていて、4階まで上がり展示を見ながら降りてくる、そんな作りでした。

           

           細かなタイルでいろいろな絵が描かれている…昔の銭湯などで見かけた懐かしい風景などのタイル絵。一般の家庭などで見かけた、浴槽、流し、かまど周りなど思い起こせばかつては様々な身近なところにタイルは使われていたことを思い出します。また、大きめもタイルに上絵で描かれた鯉や花などの絵タイルも展示されていました。建築の外壁などに使われる最近の建材としてのタイルなどまで、タイルの歴史や製造法、種類までタイルの世界の深さが体感できる展示でした。ミュージアムショップではタイルの販売、組み合わせて貼るなどの体験できる(有料)コーナーもありました。

           

           通りがかりで寄ってみた、という今回の訪問でしたが、次はじっくり時間をかけて再訪したいと思いました。

           いやあ〜、展示もそうだけど、建物に圧倒されましたよ。

          | 展示感想 | 23:11 | comments(0) | - |
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          このブログの内容は加藤兆之助商店の発行するメールマガジン「瀬戸だより」のバックナンバー(保存版)になります。 文章は発行当時の内容になっています。日付など内容にはご注意ください。記事の全文あるいは一部を無断で転載・複製は禁止します。 http://web-setomono.com
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